ポジティブチェンジ・コーチング①「ポジティブ」の意味を理解しよう【組織開発】
本コラムは、株式会社Being & Relation が、より良いチーム・組織をつくっていく上で大切にする考え方や理論、哲学、活用する手法などについて発信していくものです。
本記事では、何回かに分けて私たちのコア・コンセプトである「Positive-Change Coaching(ポジティブ-チェンジ コーチング)」について解説します。
- 将来に向けて新しいことに挑戦していきたい
- ただ、なかなか前向きな動きが出てこない
- 仕事の調整や部門間の協力促進などで、無駄な時間やコストがかかっている。
- 経営者の想いと社員の行動にズレがあるように感じる
- 業績は悪くないが、社員は疲弊し活き活きしておらず離職率が高い
- いろいろ施策を実施しても、繰り返し同じ問題が起きてしまう
など、チーム・組織の運営やマネジメントにお悩みを持つ経営者や管理者、および人材・組織開発のご担当者に向けて、その問題解決につながる理論や実践知、適応事例をお伝えします。
1回目は少し長めのコラムですが、大事なキーワード「ポジティブ」とは何かです。
ポジティブ心理学の定義
ポジティブ心理学の定義について、一般社団法人 日本ポジティブ心理学協会では下記のように定義しています。
ポジティブ心理学は、1998年当時、米国心理学会会長であったペンシルベニア大学心理学部教授のマーティン・E・P・セリグマン博士によって発議、創設されました。
その後、セリグマン博士と共に発起人として関わった、米国を中心とする第一線の心理学者たちによって分野の方向性が形成され、研究が推進されてきました。
ポジティブ心理学とは、私たち一人ひとりの人生や、私たちの属する組織や社会のあり方が、本来あるべき正しい方向に向かう状態に注目し、そのような状態を構成する諸要素について科学的に検証・実証を試みる心理学の一領域であると定義されます。
“ポジティブ心理学とは”. 一般社団法人 日本ポジティブ心理学協会.https://www.jppanetwork.org/what-is-positivepsychology,(参照2024-10-8)
そもそも「ポジティブ」の意味は?
日本企業の課題として、「エンゲージメントが低い」「モチベーションが低い」「イノベーションができない」など、ネガティブな言葉を聞いたことはありませんか?
このような課題の解決法を探る中で「ポジティブ」という観念が注目されています。
ただ、「ポジティブ」とはお花畑で仕事をすることじゃありませんし、単に楽しく生きていくということとは違います。
ポジティブの中には情緒的な快楽はありますが、それは一時的なモノです。
持続的な幸福感を得るには「自分がやっていることに意義を感じること」が必要です。
ポイントはポジティブ(Positive)の意味です。
ポジティブは、単に楽観という意味ではなく、高い徳、志、感謝、謙虚さ、優しさ、寛大さ、貢献、許し、思いやり、信頼、誠実さなどを含む行動を意味します。
ポジティブは、ネガティブの反対ではなく、ネガティブを乗り越えていく先にあるものです。
混沌とした不確かな状況の中で、健康で生産性が高いより良い組織づくりを推進していくには、揺るぎない「道標・美徳」が求められます。
すべての人間は、虐待よりも優しさを、利己主義よりも寛大さを、不信よりも信頼を、憎しみよりも愛を、無関心よりも思いやりを大切にします。
美徳は太陽のようなもので、幼い頃からすべての人間は美徳のあるところに惹かれます。
そして、美徳ある行動は、人間が本来持っているポジティブなエネルギーを引き出し、人々の傑出した行動や創造性を促進させ、イノベーションを後押し、困難な状況でもそれを乗り越える力(レジリエンス)を生み出します。
2000年頃「ポジティブな組織研究」が始まる
ポジティブ心理学とは別の流れで、2000年ごろより、アメリカのミシガン大学で「ポジティブな組織研究(Positive Organization Scholarship)」というものが始まりました。
従来の組織研究が注目するものは、組織が強いとか大きいということであり、収益性や競争優位性あるいは経済効率の視点から組織を相対的に評価することに焦点を当てていました。
一方で、「ポジティブな組織研究」は、人がベストな状態であり続ける現象に焦点をあて、時間・範囲・社会階層を超越する普遍性を見出そうとするものです。
ポジティブな組織研究の焦点は、「人々の成長の原動力とは何か」、また「個人の成長につながる組織活動とは何か」に焦点を当てた研究です。
研究では、ポジティブな感情は重要な社会的資産であることが認められています。
「ポジティブ」と「ウェルビーイング(Well-Being)」の関係
結論から言えば、ポジティブな状態であるとき、私たちは最高の私たちでいられます。
ではポジティブな状態とは何か。
日本ポジティブ心理学協会の代表理事である宇野カオリ氏によれば、
徳倫理学(virtue ethics)を問題とするポジティブ心理学においては、「よい生き方」とは「良い生き方」であり、また「善い生き方」でもある
“ポジティブ心理学とは”. 一般社団法人 日本ポジティブ心理学協会.https://www.jppanetwork.org/what-is-positivepsychology,(参照2024-10-8)
と言います。
より良い(善い)生き方こそがポジティブであり、その状態を表す言葉がWell-Beingです。
ウェルビーイングの構成要素「PERMA」
Well-Being を測定する構成要素が「PERMA」と言われる以下の5つです。
- ポジティブな感情:Positive Emotions
ストレスがあったとしてもそれとうまく付き合い、エネルギーに変える。
- 積極的な関わり:Engagement
自分の活動や仕事に集中できている。それに没入できている。
- 柔軟な人間関係:Relationships
お互いを理解したコミュニケーションができている。
- 人生(仕事)の意義:Meaning
人生(仕事)の意味や意義を自覚し、目指す方向に向かって着実に進んでいる。
- 達成への活動:Achievement
目標にコミットメントし、責任をもって活動の実践がなされている。
宇野カオリ氏とお話ししている時、PERMAって語呂合わせ的だけど、なぜこの順番なのかという話になって、ひょっとしたらPERMAの提唱者であるマーティン・セリグマンは、パーマカルチャーになぞらえてこの順番にしたのではないかという話になったことがあります。
パーマカルチャーとは、オーストラリアのビル・モリソンとデビット・ホルムグレンが構築した、人と自然が共に豊かになるような関係を築いていくためのデザイン体系のことです。
この言葉は、パーマネント(永久な)とアグリカルチャ-(農業)あるいはカルチャー(文化)を組み合わせた造語だそうです。
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この記事を書いた人:株式会社Being & Relationシニアパートナー波多江嘉之